人生の後半に向けた活動である「終活」の第一歩となるのが「断捨離」です。しかし、「自分の死亡後のことを考えるのは気が重い」「物が多くて遺品として残す物の判断が難しい」「年齢的にまだ早い」と考えて着手するのをためらう方もいるのでは?実は死亡後を想定した断捨離にはメリットがたくさんあります。今回は、終活の一環での断捨離を前向きに進めるコツや始めるべき時期、捨てる物・残す物の判断方法を解説しましょう。
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断捨離を考えている方の中には、親の残した物を片付ける経験をして遺品整理の大変さを実感している方もいるでしょう。自分にもしものことがあったときに、家の中が物であふれていたら、残された家族に大きな負担がかかる可能性があります。
人が死亡した際には、残された人がさまざまな手続きを行いますが、何がどこにあるのか分からない状態だと手続きに必要な書類を探すのに大変な思いをするかもしれません。
さらに遺品整理の際には、捨ててもいい物なのか、引き継いだほうがいい物なのか分からず整理が難航したり、親の物を処分するのに罪悪感を抱いたりと大変な思いをしがちです。
万が一のときに備えて、持ち主自身が残す物・捨てる物を判断して整理しておくと、残された家族の負担が軽くなります。相続や引き継ぎに関しても、行っておくべきことが明確になり、やり残しを回避するべく行動できます。死亡後を想定した断捨離は、家族への思いやりにつながるといってもいいでしょう。
また、家族が死亡した人の残した物を片付ける「遺品整理」とは違い、自分自身で片付ける「生前整理」では、人生を見つめ直すきっかけが生まれます。例えば趣味のスポーツ用品を手放す場合は、そのスポーツを辞めることにつながります。物を手放すことは、何らかの価値観を手放すことでもあるのです。身の周りの物とじっくり向き合うことで、老後をどのように過ごしていきたいかが見えてくるでしょう。
人生100年時代といわれ、長寿化が進む現代。まだ現役世代である50代で死亡後を想定した断捨離をするのは早いと思う方もいるかもしれません。ここからは、50代で生前整理をするメリットや想定されるリスクをチェックしていきましょう。
断捨離には物を運び出す体力や、いるかいらないかを決定する判断力が必要です。意外と精神面・体力面を消耗する作業であるため、60代以降の高齢になってからではスムーズに進めることが困難になるかもしれません。
また、子どもの手が離れていき比較的自分の時間に余裕を持てるようになる50代は、終活や生前整理をするのに適した年代といえます。いずれ行うべき作業ならば、少しでも若くラクなうちに始めるのがおすすめです。
断捨離でよくみられるトラブルとして、家の中をすっきりさせたいために家族の物を勝手に処分してケンカになってしまうということがあります。
捨てるのか残すのか煮え切らない夫にしびれを切らして妻が物を勝手に捨ててしまったり、夫の物をうっかり捨ててしまったりして、夫婦関係がギクシャクしてしまうケースです。とくに50代ごろは価値観が固まっている年齢であるため、妻が夫に終活として断捨離を提案したが強く拒まれてしまったというシチュエーションが多くみられます。
50代の女性がしてはいけない断捨離方法として、夫の物の処分を無理に強行してしまうことがあります。相手の思いを汲み、まずは自分の物を減らすことを心がけましょう。その後、「老後の夫婦生活を快適にしたい」「残された家族に負担をかけたくない」など、家族に寄り添った理由を伝えながら断捨離を提案するとうまくいくことがあります。
また、物を減らしすぎると新たに買い直さなければならない可能性もあります。本来生活に必要な物まで断捨離を進めてしまうと後々困る場面が出てくるでしょう。定年退職後に年金生活に入ると、節約を意識して物を買いづらくなるケースもあるため、50代から始める場合は勢いで断捨離するのではなく、適度に実行するのがおすすめです。
前述のとおり、できるだけ体力・精神力が残っているうちに断捨離を始めると終活がスムーズに進められますが、これまで問題なく過ごせているのだから断捨離は必要ないと思う方もいるでしょう。
自分自身の健康状態や、家の中の綺麗さに自信がある場合は早くに始める必要はありません。しかし、少しでも不安がある場合は取り掛かり始めたほうがいいでしょう。現状のままでいいか冷静に見つめなおしたときに揺らぐ場合は、始めるべき時期が来ているといえます。
死亡後を想定して断捨離を行う場合、捨てる物・残しておく物はどのように決めるといいのでしょうか。ここからは迷いなく断捨離を進めるために必要な、手放す物の基準について見ていきましょう。
残された人の立場に立ったとき、負担になりそうな物は捨てることを検討するのがおすすめです。具体的な例として以下の物があります。
故人の思い出が詰まったアルバムは、本人だけでなく過去に他界した親族などが映っている場合もあり、残された人は少なからず処分することに罪悪感を抱いてしまいがちです。アルバムの断捨離は、まず全ての写真をはがして残す写真を決め、必要な写真だけを箱や封筒にまとめるとスムーズです。写真を廃棄する際は、紙袋や封筒に入れて顔が見えないようにすると個人情報に配慮できます。
友人や近親者からの手紙や年賀状も処分しづらい物の一つ。処分する前に、送り主の連絡先をまとめた住所録を作っておくと、亡くなったことをお知らせする際に助かるでしょう。アルバムと同様、廃棄する際には個人情報に配慮し、シュレッダーにかけるなどして細かく刻む必要があります。
書斎に大量の本を置いている人や、衣類を多く所持している人も、それらの断捨離をしておくことで残された人の負担を軽くできます。本の場合は、老後も読み続けたいか判断し、もう読まない本だけ手放すといいでしょう。衣類の場合、着古した服は処分し、仕立て直して着てもらえそうな着物やスーツ、自身の葬儀のときに着せてもらいたい服は保管しておきます。そして、自分の死亡後の要望をまとめておくエンディングノートに意向を書き残すと安心です。
タンスやベッドといった大型で重たい家具は、運び出すのも解体するのも大変で、処分に困ってしまう代表的な物です。再利用してくれそうな人がいない場合は、断捨離を検討するのがおすすめ。家まで出張してくれるリサイクルショップや不用品回収業者に買取や引き取りを依頼すると、ラクに処分できます。
故人の車を遺族が相続・売却するには、名義を相続人に変更しなければならず、その手続きには多くの書類をそろえなければいけません。乗る予定のない車がある場合、生前に自身で車の名義変更や売却を行っておくと、残された人が大変な手続きをする必要がなくなり、負担を軽くすることができます。また、車を手放すことで保険料などの維持費がなくなり家計に余裕ができることもメリットです。
残すことで喜んでくれる・助かる人がいると思える物は、断捨離せずにとっておくと後悔しないで済みます。誰が引き取るかで揉めそうな場合は、エンディングノートに誰に受け取ってほしいか書き残しておくと安心です。残しておくべき物には、主に下記があります。
死亡後を想定した断捨離では、まず自分が所有している資産を把握することが大切です。不動産や預貯金などの「プラスの財産」と未払い金やローンなどの「マイナスの財産」を一覧にしておくと、残された人たちが財産状況を一目で把握でき、遺産相続時の負担を減らせます。こういった一覧のことを「財産目録」といい、裁判所のWEBサイトなどで書式テンプレートをダウンロードすることができます。
ネックレスや指輪などの貴金属や保存状態のいいブランド品は、買取専門店に持っていくと思いがけず高値がつく場合があります。また、貴金属は身につけやすいこともあり、形見として持っておきたいという人もいるかもしれません。デザインやサイズが合わない場合は、リフォームして再利用してくれる可能性もあるため、残しておくといいでしょう。
壊れた状態の時計やカメラ、電化製品などを処分したい方もいるでしょう。壊れて使えなくなっていても部品に価値がある場合は、「パーツ取り」をして買い取り、再利用してくれる業者もあります。ただ捨てるだけではもったいない場合があるため、査定をお願いしてみるのがおすすめです。
捨てたほうがいい物としてアルバムを挙げましたが、アルバムの写真の中に遺影にしたい写真があれば残しておくといいでしょう。あわただしい葬儀の準備中に、遺影の写真選びの工程が減ることは、残された人にとって助かるはずです。遺影にできそうな写真がない場合は、生前に遺影写真を撮影しておくのもいいでしょう。
死亡後を想定した断捨離は物だけでなく、パソコンやスマホに入っている「デジタル遺品」についても管理しておくと安心です。デジタル遺品は、主に以下のデータやアカウント情報を指します。
・保存している写真や動画
・SNSや通販サイト、ネットバンキングなどのアカウント
・音楽や電子書籍などの配信サービスのアカウント
・Gmailなどのメールアカウント など
写真や動画の中で人に見られたくないデータは削除しておきましょう。すぐに削除したくない場合は、「死亡後に削除」というフォルダを作ってまとめ、「アタッシェケース4」などの無料のファイル暗号化ソフトを使ってパスワード付きの圧縮ファイルに変換しておくと安心です。また、フォルダを開くだけでデータの削除を実行してくれる便利なソフトもあります。
逆に確認してもらいたいデータは、パソコンのデスクトップの目立つ場所にフォルダを作って置いておくといいでしょう。SNSや通販サイトなどのアカウントは、放置すると乗っ取られて個人情報を盗まれるおそれがあります。こういったアカウントについては、IDとパスワードをエンディングノートに記し、死亡後にアカウントの削除依頼やサービス停止してもらいたい旨などを書き残しておくといいでしょう。
ここからは、終活の一環での断捨離が効率的になる手順をチェックしてみましょう。
まずは、身の回りの物を以下の5つに仕分けます。
・現在使っている物
・使っていないが手元に置いておきたい物
・価値がある物
・判断しにくい物
・使っていない物
仕分けた物をすぐに処分するのか、死亡後に処分してもらうか、または譲るのかを決めましょう。1で仕分けた物は、それぞれ以下のように判断できます。
〈死亡後に処分してもらう・誰かに譲る〉
・現在使っている物
・使っていないが手元に置いておきたい物
・価値がある物
・判断しにくい物
〈すぐに処分する〉
・使っていない物
2で、現在使っておらず不要品と判断した物はすぐに処分します。品物や状態によっては買取専門店へ持ち込んでもいいでしょう。
自身の死亡後、誰かに譲りたいと判断した物は、エンディングノートに記しておきます。誰に何を譲るのかを明確にすることがポイントです。
このように身の周りの物を仕分けることで、自分にとって必要な物と不要な物をはっきりさせることができます。判断しにくい物については、定期的に見直して本当に必要か判断していくと、物を減らすことにつながります。
以上のポイントを押さえて効率的に断捨離を進めましょう。
誰しもいつかは人生の終わりの時を迎えますが、「元気なうちに終活として断捨離すると、悪いことが起きるのではないか」「死に支度のようで断捨離は縁起がよくないのでは」「危険だし気持ちが悪い…」といったことを考えて、断捨離を躊躇してしまう方もいるかもしれません。ここからは、前向きに断捨離を進めていくための心構えをご紹介しましょう。
断捨離は死亡後のためだけでなく、自分や家族の生活が安心・快適になるための行動でもあります。
例えば部屋がすっきりすることで、どこに何があるのかすぐに分かるようになり効率良く家事が行えることや、床に置いていた物が片付くことで転倒リスクが減り、安全に過ごせるようになることが挙げられます。さらに、自身や配偶者に在宅介護が必要になったとき、介助をスムーズに行いやすくなるケースもあるのです。
死亡後を想定した断捨離は、残された家族の負担を軽くすることはもちろんですが、今現在の生活を良くするための前向きな行動であることを意識してみましょう。
老後をすっきりした部屋で、大事な物だけに囲まれて過ごすのは精神的にもいい効果が期待できます。
物がごちゃごちゃとたくさん置かれた部屋にいると、視覚からの影響で知らず知らずのうちに脳が疲れてしまい、リラックスしづらい状態になりがちです。日々小さなストレスが溜まり続けると、気持ちの余裕がなくなってしまう可能性があります。
断捨離で視界に入る情報が減ると、部屋だけでなく精神的にもすっきりして生活の満足度を高められるでしょう。大事な物ばかりに囲まれた理想的な空間で人生の後半を過ごしてみませんか?
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体力と判断力が必要な断捨離ですが、少しでも負担を軽くしたい方は、プロに介入してもらう方法もあります。死亡後に行う遺品整理と元気なうちに行う生前整理、2つのパターンをチェックしてみましょう。
自分の死亡後の準備として、遺品整理のサービスを行う業者と生前に契約しておくことができます。子どもに負担をかけたくないという方や、遺品を引き取る人が周りにいない場合に頼りになるでしょう。リスクとしては、いざという時に遺品整理の会社が存続していない可能性があったり、本当にしっかり整理してもらえるか不安になったりするケースがあります。安心して任せるには弁護士などに間に入ってもらう他、信頼できる業者選びが重要となります。
自分が元気なうちに身の回りの物を整理しておきたいという方もいるでしょう。手っ取り早い方法として、業者に不用品の処分を依頼することも可能ですが、買取専門店による適正な査定の上、買い取ってもらうと不用品をお金に換えられるかもしれません。また、整理収納アドバイザーに依頼して、いる物・いらない物の判断から片付けを一緒に行うという方法もあります。
1人で断捨離を行うのは大きな負担がかかるものです。遺品整理・生前整理でお悩みがある場合はプロへの依頼を検討してみましょう。
死亡後を想定した断捨離は、老後をすっきりとした環境で過ごすことができ、残された人の負担を軽くすることができるメリットの多い作業です。できるだけ体力と判断力がある元気なうちに取りかかっておくといいでしょう。不要な物がたくさん出てきた場合は、買取専門店への査定依頼や、出張買取サービスの利用がおすすめです。プロの手も借りながら身の回りを整理し、次世代への引き継ぎを行いましょう。
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