特徴的な艶のある漆黒の宝石“ジェット”は、ヨーロッパを中心に、紀元前から魔除けに効果のある石として人々に珍重されてきました。ジェットの神秘的な光沢とあたたかみのある質感は、特にモーニングジュエリーとして高い人気があります。この記事では、古くから人々が惹きつけられてきたジェットについて、特徴や歴史、スピリチュアル的な効果を詳しく紹介します。買取時に高く売るコツも紹介するので、ジェットをお持ちの方は参考にしてください。
INDEX
ジェットには、惹きつけられる独特の魅力があります。古代の人々にも珍重されており、古い歴史のある宝石です。ジェットの特徴や歴史について紹介します。
「漆黒の宝石」とも呼ばれるジェットは、太古の樹木の化石です。水中に積み重なった流木が、数百万年をかけてそのままの形で炭化しています。多くの宝石は、無機質である鉱石から作られますが、ジェットは真珠(しんじゅ/パール)や琥珀(こはく/アンバー)などと同じ分類である、有機質宝石です。
ジェットは、軽かったり、こすると静電気を帯びたりするという特徴が似ていることから、樹脂の塊である琥珀と同じものとして考えられていました。しかし、20世紀初頭に顕微鏡でジェットに年輪が確認されたことで、琥珀とは異なり、樹木の枝や幹からできていることが判明したのです。
ジェットの原石は、石炭のような真っ黒な色をしています。研磨することで、やわらかく美しい独特の光沢が現れるのが特徴です。
ジェットの基本情報は次のとおりです。
名前 | ジェット(英名:Jet) |
---|---|
和名 | 黒玉(こくぎょく) |
別名 | 黒琥珀(くろこはく)、ブラックアンバー |
色 | 漆黒、こげ茶 |
分類 | 有機質宝石 |
成分 | 瀝青炭(れきせいたん)といわれる炭素物質(C+不純物) |
成分 | 瀝青炭(れきせいたん)といわれる炭素物質(C+不純物) |
結晶系 | 非晶質 |
硬さ | やわらかい
モース硬度*:2.5~4.0 |
比重 | 1.33~1.35 |
光沢 | ガラス光沢(研磨による) |
屈折率 | 1.66 |
ジェットは成分上石炭の仲間であり、燃やすと石炭と同じ独特なにおいがあります。ただし、木目を残している点が石炭とは異なる特徴です。
また、化石化する際の環境の違いで「ハードジェット」と「ソフトジェット」の2タイプに分けられます。ハードジェットのほうが硬く弾力性があり、加工しやすいのが特徴です。ソフトジェットは年月の経過によって壊れやすいため、遺物としては残りません。ただし、ハードジェットであってもほかの宝石と比べるとやわらかく、硬度は琥珀や真珠と同じくらいです。また、ジェットは宝石の中で非常に軽いことも特徴といえます。
ジェットは、石炭層のある世界中の土地から産出されますが、もっとも有名な産地はイギリスのウィットビー地方です。ウィットビー地方の鉱山で採れるジェットは質が良く、「ウィットビージェット」と呼ばれ高い人気があります。
しかし、ウィットビー地方の鉱山は19世紀末に閉山されたため、現在ウィットビージェットはアンティークのみです。そのため、1993年に中国でウィットビージェットのように質の高いジェット鉱山が発見されるまで、ジェットは「幻の宝石」と呼ばれていました。
ジェットは、人類の歴史上もっとも古い宝石のひとつです。
紀元前1万年(石器時代)の遺跡からも発見され、魔除けの効果がある神秘的な石として扱われていたことが分かっています。1世紀~3世紀ごろの古代ローマ時代には多くの装飾品や小物に活用され、産業に使われました。また、7世紀~17世紀は、キリスト教の普及とともに、聖職者を中心にジェットが身に着けられています。流行と衰退を繰り返しつつも、ジェットはヨーロッパで珍重されてきた宝石なのです。
ジェットの歴史上、もっとも影響力のあった出来事は、19世紀のイギリスのヴィクトリア女王によるものでしょう。1861~1887年の25年間、ヴィクトリア女王は夫の死を悼むためにジェットを「モーニングジュエリー(喪事に着用する宝石)」と定め、自分や周囲の者に身に着けさせました。それにより、ジェットのネックレスやブローチなどが、イギリスをはじめとしたヨーロッパで大流行したのです。日本の皇室でも、明治以降はヴィクトリア女王に倣い、モーニングジュエリーとしてジェットを身に着けるようになりました。
現在は、ジェットはモーニングジュエリーとしてだけでなく、普段使いのアクセサリーにも幅広く使用されています。
ジェットは古くから、世界の各地で呪いや悪魔を遠ざけるためのお守りとして身に着けられていました。粉末状にして飲むことで病気を治したり、燃やしてヘビ除けにしたりすることもあったようです。ジェットの漆黒の色、燃やしたときのにおいや煙、帯電性があるといった独特の特徴が、魔術的な側面と結びつけられたと考えられています。
また、やわらかく加工しやすい点も、装飾品として流通した理由のひとつといえるでしょう。
宝石のジェットは、パワーストーンとして「忘却」の意味を持つのが特徴です。ジェットの宝石言葉やスピリチュアル的な効果について紹介しましょう。
「忘却」・「魔除け」・「闇の浄化」が、ジェットの宝石言葉です。ジェットは、悲しみや嫌な出来事を忘れさせてくれる宝石として人気があります。トラウマに悩んでいる場合や、自分の中にあるネガティブなイメージを浄化したい場合などのお守りとして最適です。
ジェットは、自分の中にあるマイナスなエネルギーをプラスの方向に転換してくれる効果がある宝石です。心の闇を浄化し、悪影響を与えるものから持ち主を守ってくれるでしょう。嫌なことを思い出して傷ついたり不安定な感情になったりしやすい人は、悲しみから解放され、ストレスが軽減する効果も期待できます。
また、ジェットは他者からの干渉を遮断する力があるため、他人に流されやすい人や、個人主義の人にもおすすめです。集中力を高め、自分の意思をしっかりと持つことで、対人関係や仕事上で自分らしくあることを支えてくれるでしょう。
ジェットは独特の魅力がある宝石ですが、どのような点に価値があるのでしょうか。宝石ジェットの価値について紹介します。
ジェットは不純物が多く、密度が低い原石を使用すると、ひび割れしやすかったり色や艶が悪くなったりしてしまいます。そのため、密度が高く艶や照りのあるものが、破損しにくく高品質なジェットといえるでしょう。
イギリスのウィットビー地方の鉱山で採れる「ウィットビージェット」は、ジェットの中でも特に価値が高いといわれています。ヴィクトリア女王が愛用したジェットも、ウィットビージェットです。ウィットビー地方の鉱山は閉山されているため、現在はアンティークジェットのみの流通ですが、現在でも高い価値が認められています。
ジェットは、ヴィクトリア女王に倣って日本の皇族がモーニングジュエリーとして使用するようになったことで、日本国内でも人気になりました。黒真珠と並んで、モーニングジュエリーとして高い人気のある宝石です。
宝石は、採掘された際の原石の品質によって、「ジェム」「ジュエリー」「アクセサリー」の3つのクオリティに分けられます。ジェムクオリティがもっとも品質の高いものです。ジェットの原石で「ジュエリークオリティ」が認められるものは少なく、90%以上は不純物が多かったり色が悪かったりするといわれています。そのため、流通している製品の中には、粗悪品が紛れている可能性も少なくありません。
また、ジェットという名称で、クリスタルガラスやプラスチック樹脂製品が販売されていることもあるため、注意してください。
ジェットのように、黒い色が特徴の宝石はほかにもあります。ジェットに似ている宝石との違いについて紹介しましょう。
オニキスは、ギリシャ語で「爪」という意味を持つ言葉が由来の天然石です。表面に縞(しま)模様があったり赤や白の模様があったりと、オニキスは個体によってさまざまな表情があります。ジェットに似ているのは、真っ黒で縞模様がほとんど無く、ガラス状の光沢がある「ブラックオニキス」です。日本では、単にオニキスと呼ぶ場合、一般的にはブラックオニキスを指します。 オニキスの基本情報は以下のとおりです。
名前 | オニキス(英名:onyx) |
---|---|
和名 | 縞瑪瑙(しまめのう)・黒瑪瑙(くろめのう)など特徴により異なる |
色 | 黒、白、グレー、赤、茶など |
分類 | 酸化鉱物 |
成分 | 二酸化ケイ素(SiO2) |
結晶系 | 潜晶質石英 |
モース硬度 | 6.5~7 |
比重 | 2.55~2.70 |
光沢 | ガラス状・樹脂光沢 |
屈折率 | 1.53~1.54 |
宝石言葉 | 「厄除け(魔除け)」「成功」「夫婦の幸せ」 |
オニキスの中でもブラックオニキスは、ジェットと同じように魔除けの力が信じられているパワーストーンです。邪悪なものを遠ざけて運気を好転させるため、お守りや魔除け石、縁切り石として身に着けられてきました。
ジェットとブラックオニキスは、どちらも黒くてガラス状光沢がある点が似ています。しかし、一番の違いは重さ(比重)です。オニキスは鉱石で比重が2.60ほどありますが、ジェットは樹木の化石なため、比重は1.33。約2倍の比重があり、同じ大きさならオニキスのほうがずっと重くなる点が、見分けるポイントです。
モリオンは、黒色で光を通さない水晶です。水晶が黒くなる理由ははっきりしていませんが、微量のアルミニウムイオンを含んだ水晶が地中の放射能の影響を受けることで、黒く変色すると考えられています。
モリオンの基本情報は以下のとおりです。
名前 | モリオン(英名:Morion) |
---|---|
和名 | 黒水晶(くろすいしょう) |
色 | 黒 |
分類 | 酸化鉱物 |
成分 | 二酸化ケイ素(SiO2) |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
モース硬度 | 7 |
比重 | 2.65 |
光沢 | ガラス状光沢 |
屈折率 | 1.54~1.56 |
宝石言葉 | 「厄除け(魔除け)」「邪気払い」「落ち着き」 |
モリオンは、その神秘的な魅力ゆえに強力な魔除け・邪気払いの力があると信じられ、昔から巫女や霊能力者などに使用されてきました。水晶はもともと魔除けや邪気払いの効果が期待できますが、黒いモリオンは、よりその力が強くなっていると捉えられています。
モリオンとジェットも、比重が一番の違いです。モリオンの比重は2.65ですが、ジェットの比重は1.33のため、ジェットのほうが軽くなります。実際に手に取ってみると、違いは明確でしょう。
天然ジェットとは、長い年月をかけて樹木が化石化した、漆黒の有機質宝石のことです。市場には、天然ジェットに似た代用品や模造品が販売されていることも少なくありません。天然ジェットの見分け方を紹介しましょう。
ジェットの代用品としては、フレンチジェットと呼ばれる黒ガラスや、炭化したオーク材のボグオーク、黒曜石などが使われています。現在は希少ですが、ベークライトというプラスチックの一種も、昔はジェットの代用品として使われていました。
ボルカナイトやアンスラサイトという鉱物は、ジェットと見た目がそっくりなことから、模造品としてよく使用されています。
似たような見た目の宝石やパワーストーンがありますが、天然ジェットを簡単に見分けるポイントは、「重さ」「静電気」「こすった痕跡」です。
ジェットは樹木の化石であるため比重が小さく、非常に軽い特徴があります。こすると静電気を発生する性質も、ジェットの大きな特徴です。また、実際に行うことは難しいかもしれませんが、本物と模造品を区別する場合、素焼きの陶磁器などにこすりつけてみる方法があります。ジェットの場合は、こすった跡が茶色く残ります。ジェットが樹木の化石であることをイメージすると、理解できる見分け方でしょう。
ジェットを身に着けたいと思ったら、どのようなブランドや商品があるのでしょうか。人気の天然ジェットブランドや、ジェットの宝石としての価格帯について紹介します。
天然ジェットを使用したブランドとして日本で人気が高いのが、「ヴィクトリアンジェット」です。中国で上質なジェットが採掘されるようになったため、1994年、日本のジュエリー市場に登場しました。
「ヴィクトリアンジェット」は、中国で採取できる原石の中から、わずか9%しか無い良質なジュエリークオリティの原石を買いつけて製品化しています。そのため、製品化されるのは原石のうちのほんのわずかです。
品質の高さに加えて、アフターケアも充実。落ち着いた輝きとデザイン性、身に着けやすい軽さ、有機質宝石ならではのぬくもりが、「ヴィクトリアンジェット」の人気の理由になっています。「ヴィクトリアンジェット」のジュエリーは、どの製品もモーニングジュエリーとして身に着けることが可能です。
天然ジェットは、モーニングジュエリーとして人気が高いことから、フォーマルなネックレスやイヤリング、数珠などの製品が多く流通しています。
天然ジェットは、宝石としては高額なほうではありません。ネックレスやイヤリングは、10,000~20,000円台から販売されています。手頃な価格帯のジュエリーであれば、10,000円以下でも手に入るでしょう。
また、ヴィクトリア女王時代のアンティークジェットも人気があり、オークションや買取専門店でも数万円ほどで取引されています。ジェットは、相場の変動があまり大きくないのも特徴です。
ジェットはやわらかい有機質宝石であるため、傷つきやすく、酸やアルカリに強くありません。また、ジェットは樹木からできていることから、宝石の中では珍しく、燃える性質を持ちます。そのため、火を扱う場合には必ず外して作業するなど、取り扱いや保管には重々注意が必要です。
ジェットを保管する際は、ほかのジュエリーやアクセサリーとぶつかって傷つかないように、専用の袋やケースに入れましょう。乾燥することでひび割れる可能性があるため、必ず直射日光が当たらない場所に保管してください。また、保管場所に直接乾燥剤や除湿剤を入れることも避けることも大切です。
ジェットは酸に弱いため、素肌に身に着けて汗がついた場合などは、必ず拭き取ってから保管しましょう。
宝石を使用した後のお手入れは、乾いたやわらかい布でやさしく拭くのが基本です。ただし、ジェットは水に強い宝石なので、乾いた布で拭いても落ちない汚れがある場合は、水やぬるま湯を使用して洗うことも問題ありません。水洗いしたい場合は、水の中で汚れを浮かせてから、毛のやわらかいブラシでやさしくこすったり、布で汚れを拭き取ったりしましょう。水洗いや濡れた布で拭いた後は、直射日光が当たらず、かつ風通しの良い場所に置いて、乾かしてから保管します。
なお、超音波洗浄機は使用できません。
手元にあるジェットをなるべくお得に手放したい場合は、宝石の買取に精通している買取専門店に売るのがおすすめです。ジェットを高く買取してもらうためのコツを紹介しましょう。
また、宝石を売るタイミングについては以下の記事も参考にしてください。
宝石の売り時はいつ?高値で売れる宝石や売る時の注意点を解説
ジェットだけに限りませんが、宝石やジュエリーを買取してもらう場合は、査定時にできる限り綺麗な状態にしておくことが大切なポイントです。査定時に商品の状態が良いと、買取価格が高くなる可能性があります。
ジェットは酸に弱く、身に着けた際の皮脂や汗などの付着によって劣化してしまいます。また、保管状態が悪いと、ひび割れする可能性も少なくありません。そのため、日ごろから丁寧に扱い、適切なお手入れ・保管方法を意識することが大切です。
ジェットを使用したジュエリーを買取してもらう際は、購入時に付属していたものもすべて一緒に査定に出しましょう。付属品とは、宝石を購入すると多くの場合についている鑑別書や保証書、ジュエリーの入っていたケースやポーチなどです。
ジュエリーの買取時は、これらの付属品が揃っていたほうが再販に有利なため、高額買取につながる可能性があります。付属品が無ければ売れないわけではありませんが、買取金額を高くするためには、処分せずに手元に保管しておきましょう。
買取専門店にジュエリーを売るときは、一緒にほかのジュエリーやブランド品などを売ると、高額買取につながる可能性があります。
エコリングは、ジュエリーやブランド品以外にも、日用品や電化製品、洋服など幅広い製品を買取可能です。まとめて売ると一度に多くの不要品を処分できるため、売る側の手間もかからず、メリットの多い方法といえます。
ジェットを売る際は、宝石の買取実績が豊富な買取専門店を選ぶことも重要です。天然ジェットの価値を正確に判断してもらうためには、知識と経験が豊富な鑑定士がいるお店を選びましょう。
エコリングには経験豊富な鑑定士が多く在籍しており、買取専門店の業界の中でもジュエリー・宝石の買取数がトップクラスであることが強み。また、エコリング独自のメンテナンス技術により、ジュエリーの状態が悪くても高価買取可能な場合がある点も特徴です。
ジェットは、太古の樹木が長い年月をかけることでできた宝石です。原石のままでは輝きはありませんが、研磨することで独特の光沢や艶が現れます。ジェットの神秘的な魅力は歴史上特別な存在感を放っており、現在も、モーニングジュエリーや日常使いの宝石として愛されています。お手元に使っていないジェットのジュエリーをお持ちの場合は、ぜひ買取実績が豊富なエコリングでの売却をご検討ください。
不要になった貴金属はございませんか?不要だからといってずっと閉まっておくのは勿体ないです。エコリングでは、貴金属やジュエリー類以外のものでもなんでもお買取りさせていただきます。一度買取できるか?いくらになるか相談してみませんか?
エコリングではLINEで簡単に買取相談ができます。ぜひ一度ご相談ください。
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